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戸籍情報の取得 二刀流ブログ第20回 相続はどこから手をつけるかその1

相続はどこから手をつけるか その1


■質問

私は横浜市に居住するサラリーマンです。

今年10月に東京都渋谷区に居住する父が亡くなりました。

葬儀、納骨は無事終了しておりますが、父には渋谷区の自宅のほか、預貯金や株式なども持っていたようで、相続税がいくらかかるか心配です。

ただし、このようなことは初めてで何から始めたらわからないのが正直なところです。

相続人は私、母、妹の3人です。

どうしたらよいか教えて下さい。

相続手続きでやるべきこと


相続手続きでやるべきことは以下のとおりです。

まずは1.戸籍証明書の取得について説明し、順次2.~6.についてご説明します。

1.戸籍証明書の取得

2.法定相続情報の作成

3.遺言書を探す

4.財産の評価

5.遺産分割協議書の作成

6.相続税申告書の作成

戸籍証明書の取得


目的:相続人の確定

戸籍証明書を取得する目的は被相続人の法定相続人が誰かを確定するためです。

遺産分割協議は全ての法定相続人で行い、署名押印を行う必要がありますし、相続税の計算も法定相続人の数がわからないと計算できない項目があります。

ご質問の場合は、お父様が生まれてから亡くなるまでの戸籍証明書を市町村役場で取得する必要があります。

以下の場合には、上記に加えて証明書等が必要になりますのでご注意下さい。

 

相続人が先に亡くなっている場合で、孫が相続する場合

この場合、孫の現在の戸籍証明書が必要になります。

きょうだいが相続する場合

被相続人に子がなく、両親などの直系尊属も既に亡くなっている場合、きょうだいが法定相続人となります。

この場合、両親それぞれの生まれてから亡くなるまでの戸籍証明書が必要になります。

昔は、両親の一方又は双方が養子になっていることもありますので、その分取得しなければならない書類の数が増えます。

戸籍以外の証明書が必要な場合

配偶者が外国人の場合、その外国に日本のような戸籍制度があれば、その外国の戸籍証明書が必要となります。

戸籍制度がない場合、これにかわる証明書を用意しなければなりません。

日本に住んでいる方の場合、日本にあるその外国の大使館で、被相続人との関係を証明してもらったうえでその証明書(認証文)を日本語訳したものが必要になります。

戸籍証明書の広域取得

今まで戸籍証明書は、被相続人等の現在の戸籍、過去の戸籍があった各市町村役場に個別に請求しなければならず、被相続人が転勤族だったり、養子に入っている場合などではその市町村が広範囲となり取得に大変な手間がかかるケースがありました。

しかし、令和6年3月1日からは相続人の最寄りの市町村役場でまとめて請求できるようになり、随分と負担が軽減されました。

戸籍証明書の広域取得制度(法務省ホームページ)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

戸籍証明書取得の落とし穴


「落とし穴」とも言えないのですが、私が陥った「落とし穴」をひとつご紹介します。

被相続人の奥様は、日本に住所がありましたが、A国籍でした。

相続税申告の依頼を受けたのは、コロナ禍真っ只中の令和3年4月で相続税の申告期限は令和3年の12月25日。

 

奥様を相続人として確定するためには、原則としてA国大使館の認証文とその日本語訳が必要です。

奥様を通じて大使館に問い合わせするも、コロナのため大使館の窓口業務は行っていないので、本国に本人が出向いて手続きをするようにとのこと。

そのため、奥様に本国まで出向いて取得してもらうことになりました。

しかし、本国でもコロナで窓口業務を縮小していたため、書類が入手できたのは相続税申告の2週間前。

 

このように外国の政府がからむ手続きには非常に時間がかかることがあります。

また、国内でも相続人に手続きをお任せした場合、不慣れなこともあり、同様に時間がかかるケースがあります。

相続人の確定がずれ込むとその分だけ、遺産分割協議書の作成、相続税申告書の作成も後ろにずれてしまいます。

この時も、もし取得が間に合わない場合認証文等はないけれども奥様として申告してしまう「見切り発車」すべきか、他に証明する手段はないのか、非常に悩んでしまいました。

 

相続人ご自身でできることにはなりますが、少しでも難しいそうだなと感じたら、費用がかかっても専門家に依頼する方が得策だと思います(当事務所でも直接取得をお手伝いすることがありますが、複雑な場合は、提携している司法書士のお力添えをお願いし、万全を期するようにしております)。

 

 

法定相続人とは


法定相続人とは民法で被相続人の相続財産を相続できると定められる人をいい、相続の放棄ががあった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人をいいます。

法定相続人になることができるのは、被相続人の配偶者と被相続人の血族(血族相続人)です。

血族相続人については相続人となれる順位が以下のとおり定められています。

第1順位:子、その代襲相続人

第2順位:親、祖父母などの直系尊属

第3順位:兄弟姉妹(きょうだい)、その代襲相続人(1代限り)

 

 

法定相続人の数が関係する相続税の計算


法定相続人の数が関係する相続税の計算のうち主なものは以下のとおりです。

1.相続税の基礎控除額の計算

2.生命保険金の非課税限度額の計算

3.退職手当金の非課税限度額の計算

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