■今回は地形図について
今回は、地形図について簡単な理解と使い方及び落とし穴について説明していきます(※1)。
※1:前回と同様、各図面の簡単な理解は筆者なりの実務上の理解です。厳密な定義については各地図の発行元や各方面の専門家の書籍等をご参照ください。
不動産の相続税評価に必要な
公図、地積測量図、建物図面・各階平面図については⇒二刀流ブログ第5回 「図面を揃えよう!(その1)」
住宅地図については⇒二刀流ブログ第6回 「住宅地図の使い方、知っていますか?」
をご覧ください。
■地形図とは
地形図とは、測量に基づいて、川、海岸線、等高線などの地形が記載された地図(図面)です。
小学校や中学校で習うアレです。
有名なのは国土地理院発行の5万分の1、2万5千分の1地形図ですが、ここではそれよりも縮尺が大きい5千分の1、2千500分の1の地図についても敢えて地形図と呼んでいます。
一部の地形図はインターネットで閲覧することができますが、市役所の売店などで販売されていますのでそれを購入します(※2)。
※2:地形図の販売等
市区町村の図書館で閲覧、コピーすることができる市町村も多いです。
■地形図の使い方
相続税の評価において地形図は、主にその土地の傾斜度を把握するために使います。
等高線と等高線を直線で結び、直線と等高線の交点の距離と高さをプロットすると傾斜度が把握できます。
その土地が市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野である場合、その土地の最も合理的な使用方法は造成して宅地として利用することであると考えられています。
従って、その価格は整地や土盛りなどの造成が要らない宅地の価格よりも造成費などの分だけ低く評価されます(※3、4、5、6、7)。
造成費は、原則として整地費、伐採伐根費などをそれぞれ査定してその結果を積算(足し算)して査定します。ただし、傾斜地(傾斜度3度超の土地)についてはこれらの各費用を含んだ造成費を傾斜度ごとにいくらと決められており、これをそのまま使うとしています(下記イメージ参照)。
従って、宅地造成費を査定するためには、その土地の傾斜度を把握する必要があるのです。
傾斜度はこの地形図に記載されている等高線(※8)を使います。
※3:市街化農地の評価(財産評価基本通達40)
市街地農地の価額は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
ただし、市街化区域内に存する市街地農地については、その農地の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある農地の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することができるものとし、その倍率が定められている地域にある市街地農地の価額は、その農地の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
(注) その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、その付近にある宅地について11≪評価の方式≫に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その宅地とその農地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価するものとする。
※4:市街地周辺農地の評価(財産評価基本通達39)
市街地周辺農地の価額は、次項本文(筆者注:上記の「市街地農地の評価」本文)の定めにより評価したその農地が市街地農地であるとした場合の価額の100分の80に相当する金額によって評価する。
※5:市街地山林の評価(財産評価基本通達49)
市街地山林の価額は、その山林が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から、その山林を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その山林の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
ただし、その市街地山林の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある山林の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することができるものとし、その倍率が定められている地域にある市街地山林の価額は、その山林の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
なお、その市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合には、その山林の価額は、近隣の純山林の価額に比準して評価する。
1 「その山林が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額」は、その付近にある宅地について11((評価の方式))に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その宅地とその山林との位置、形状等の条件の差を考慮して評価する。
2 「その市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合」とは、その山林を本項本文によって評価した場合の価額が近隣の純山林の価額に比準して評価した価額を下回る場合、又はその山林が急傾斜地等であるために宅地造成ができないと認められる場合をいう。
※6:市街地原野の評価(財産評価基本通達58-3)
市街地原野の価額は、その原野が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から、その原野を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除した金額に、その原野の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
ただし、その市街地原野の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある原野の売買実例価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することができるものとし、その倍率が定められている地域にある市街地原野の価額は、その原野の固定資産税評価額にその倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
(注) その原野が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、その付近にある宅地について11≪評価の方式≫に定める方式によって評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その宅地とその原野との位置、形状等の条件の差を考慮して評価するものとする。
※7:宅地については造成費相当額の評価減はできないのか
財産評価基本通達の字面(じづら)だけ読むと、これらの農地、山林、原野だけしか造成費を控除できないように見えますが、宅地であっても傾斜地などで建物の建築するにあたり前もって大きな造成費がかかると見込まれる土地については造成費を控除(差し引く)ことができると考えます(財産評価基本通達6)
※8:等高線
「コンタ」と呼んだりすることがあります。
〇宅地造成費の金額表
出典:神奈川県 財産評価基準書 宅地造成費の金額表(「財産評価基準書」で検索すると入れます!) www.rosenka.nta.go.jp/main_h30/tokyo/kanagawa/others/d310300.htm
■地形図の落とし穴
地形図には、5万分の1、2万5千分の1など様々な縮尺のものがありますが、なるべく縮尺が大きいものを使用しましょう。
縮尺が小さくても傾斜度を測れなくはありませんが、一般の方や(不慣れな)税理士の先生が手作業でやることを前提とすると土地の範囲をプロットするだけでも面倒くさいと思います(※9)。
2千500分の1が最も縮尺が大きい地図であるという市町村が多いですが、1千分の1のものが備え付けられているところもあります。取得するときには必ず「等高線が記載されていて、最も縮尺が大きいものをください!」と伝えましょう。
以下に地形図のイメージを示しましたので参考にしてください。
※9:縮尺が大きくても小さくても、手作業ではなくCAD(「キャド」)を使うと作業がラクです。
〇地形図のイメージ
〇傾斜度測定のイメージ
路線価評価では、傾斜度については、原則として、測定する起点は評価する土地に最も近い道路面の高さとし、傾斜の頂点(最下点)は、評価する土地の頂点(最下点)が奥行距離の最も長い地点にあるものとして判定します(宅地造成費の金額表1(表2)(留意事項(3))ので実はとても簡略化されています。
■まとめ
1:地形図はその土地の傾斜度を把握し、造成費を査定するために使います。造成費は土地の相続税評価を下げてくれる貴重な存在ですので、面倒がらずにきちんと準備しましょう!
2:地形図は、市町村の売店などで購入したり、図書館でもコピーしたりできます。
3:土地の傾斜度は、地形図に記載されている等高線(コンタ)を使います。
4.土地の相続税評価において、宅地造成費は整地費、伐採伐根費などを積算して査定しますが、傾斜地の場合はこれらをすべて包含した金額が定められています。
5.地形図は、なるべく縮尺が大きいものを使いましょう。
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